家系図調査の大工業者を調べると次々と行政書士事務所のサービスが見つかります。行政書士とは何者で家系図調査において行政書士の助けが本当に必要なのかまとめてみました。
そもそも行政書士とは?
そもそも行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格で、官公署への提出書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続、行政書士が作成した官公署提出書類に関する行政不服申立て手続等の代理、作成に伴う相談などにを行う専門職です。
行政書士になる方法
行政書士になる方法は行政書士法の第二条に書かれています。
第二条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
一 行政書士試験に合格した者二 弁護士となる資格を有する者三 弁理士となる資格を有する者四 公認会計士となる資格を有する者五 税理士となる資格を有する者六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては十七年以上)になる者
行政書士試験に合格した人が行政書士になれるのは当然ですが弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の有資格者も行政書士になれるというのは非常に興味深いです。これらの資格者は日本行政書士会連合会に登録することで行政書士としての資格も取得することができます。
行政書士が戸籍を調べられる訳
弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士は、 受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付請求をすることができます。
これが行政書士が戸籍を調査できる理由です。
行政書士法違反事件から分かること
平成22年12月20日に最高裁判所にて行政書士法違反事件の判決がありました。
訴えられた内容
これは行政書士資格のない男性が「事実証明に関する書類である家系図」作成を行なって報酬を不当に得たと訴えられた裁判です。
被告人は,行政書士でなく,かつ,法定の除外事由がないのに,第1 共犯者甲と共謀の上,業として,別表1記載のとおり,平成18年6月25日から平成19年3月6日までの間,前後3回にわたり,北海道斜里郡の被告人方において,3名から依頼を受け,事実証明に関する書類である家系図合計3通を作成し,その報酬として合計33万8685円の交付を受け,第2共犯者乙と共謀の上,業として,別表2記載のとおり,平成18年7月10日から平成19年4月1日までの間,前後3回にわたり,前記被告人方において,3名から依頼を受け,事実証明に関する書類である家系図合計3通を作成し,その報酬として合計56万7000円の交付を受け,もって行政書士の業務を行った。
判決のポイント
この裁判の判決のポイントは家系図が「事実証明に関する書類である」かどうかの判断になります。
そして一審と二審では家系図が「事実証明に関する書類である」と判断されて有罪が決まっていました。
最高裁の判断
最高裁の判断は以下のようなものでした。
本件家系図は,自らの家系図を体裁の良い形式で残しておきたいという依頼者の希望に沿って,個人の観賞ないしは記念のための品として作成されたと認められるものであり,それ以上の対外的な関係で意味のある証明文書として利用されることが予定されていたことをうかがわせる具体的な事情は見当たらない。そうすると,このような事実関係の下では,本件家系図は,依頼者に係る身分関係を表示した書類であることは否定できないとしても,行政書士法1条の2第1項にいう「事実証明に関する書類」に当たるとみることはできないというべきである。
つまり家系図が「事実証明に関する書類ではない」というのが結論になりました。
また裁判官の家系図調査についてのコメントがまた興味深いものです。
家系に関する人々の関心は古くからあり,学問も成立しており,郷土史家をはじめとして多くの人々が研究調査し,ときに依頼を受けて家系図の作成を行うなどしてきたのである。そして,家系図の作成は,戸籍・除籍の調査にとどまらず,古文書・古記録を調査し,ある程度専門的な判断を経て行われる作業でもある。
行政書士は,戸籍・除籍の調査に関しては専門職であるが,それを超えた調査に関しては,特段,能力が担保されているわけではない。家系図は,家系についての調査の成果物ではあるが,公的には証明文書とはいえず,その形状・体裁からみて,通常は,一見明瞭に観賞目的あるいは記念のための品物であるとみることができる。家系図作成について,行政書士の資格を有しない者が行うと国民生活や親族関係に混乱を生ずる危険があるという判断は大仰にすぎ,これを行政書士職の独占業務であるとすることは相当でないというべきである。
「行政書士は,戸籍・除籍の調査に関しては専門職であるが,それを超えた調査に関しては,特段,能力が担保されているわけではない」というコメントは行政書士ができる業務限界がはっきりと明記されていて利用者である我々の目を覚まさせてくれます。
そもそも行政書士でなくても第三者が戸籍を請求できる
実は少し調べればすぐに分かりますが委任状さえあれば代理人でも戸籍を請求することができます。
以下は東京都江戸川区のHPに記載されている戸籍謄本を請求できる人です。3番目に代理人が委任状を使って請求できることが明記されています。
戸籍謄本を請求できる人
- 戸籍に記載されている人、又その配偶者。
- 戸籍に記載されている人の直系の尊属(父母や祖父母)、卑属(子や孫)
- 代理人(依頼者の委任状必須)
- 利害関係にあり戸籍を請求するにあたって正当な権利や義務がある人